遠くに漁火が見えた 

学生の頃、ひとりで東北を一周しました。下北半島をぐるりとしたときに、下風呂温泉というところに泊まりました。

そこを選んだのは、たまたま、時間的なものだったのですが、観光のトップシーズンとはいえ、若い娘がひとりで本州最北端の温泉宿に宿泊、というのはやはり珍しかったのでしょう。何かあってはいけないと心配したのか、民宿の親父さんが何かと理由をつけては声をかけてきました。いえ、傷心旅行ではありませんから。

宿の窓から、遠くに漁火が見えました。「マイカを採っている」と、宿の親父さんの方言を聴き取るのに少し苦労しました。「いさりび」は言葉では知っていても、そんな時間に漁に出ている人たちが居るなど、想像もしなかった私は、驚きと共に遠くに見える幻想的な風景を長いこと眺めていました。

翌朝、食堂に行くと、朝からイカそうめんが出ました。「採れたてのイカです」と親父さん。新鮮でおいしかったそれは、漁火の情景とともに記憶に刻まれ、未だに忘れることができません。

第287回FC2トラックバックテーマ「旅行先で食べた忘れられない味」

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